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「あなたの、きれいよ」
ある女性と付き合うようになって、二度目の逢瀬のときに、彼女にそう言われた。
「形とか色とか、今まで見た中で一番きれい」
私もいままで「きれい」と言われたのは初めだった。
その前に、自分のものの感想を言われた事自体初めてだが。
「じゃ、他の男は?」
と訊きそうになったが、そんな無粋なことを訊ねるのは私の美学に反することなので止めた。
彼女はよく口でしてくれた。
それも長時間。
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2016/03/09(水) 09:36 エッセイ、雑記 PERMALINK COM(0)
高校生の娘が彼氏を連れてきた。
二人とも神妙な面持ちで、父親の前に並んで座った。
娘が重々しく口を開いた。
「お父さん、怒らないで聞いて欲しいの……」
「もしかして……お、お前ら……お、お俺は、出来ちゃった結婚なんて絶対許さないからな!」
「ですから、そうなる前に結婚したいんです。昨日ぼく、失敗しちゃったから……」

2016/03/09(水) 09:03 小噺 PERMALINK COM(0)
大学の二次試験を来週に控えた日曜日。
女子高校生の部屋には少し春めいた日差しが差し込んでいた。
勉強机に向かい、鉛筆を握る女の子。
その女の子の耳に、家庭教師の女子大生がささやいた。
「もう、私が教えることはないわ。あとは、受験会場での集中力だけよ」
「は、はい……」
女の子が、家庭教師の吐息に首をすくめる。
「周りでは鉛筆を走らせる音、鼻をすする音、貧乏ゆすりなんかする子もいるわ。でもそれを気にしちゃだめよ。目の前の答案用紙だけに集中するの。わかった?」
「あっ、はい……でも……あっ、先生……」
女の子の耳たぶが、甘噛みされたのだ。
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2016/03/08(火) 08:15 ショートショート PERMALINK COM(0)
「あら、やっとお目覚め?」
おぼろげな意識の中で、北条美樹はその声の主を見た。
長い金髪の女だ。
鼻が高く日本人離れしている。
色白の顔に、真っ赤な口紅が映えた。
白いブラウスの胸が、はち切れそうだった。
歳は三十代半ばだろうか。
赤いマニキュアを施した長い爪が、美樹が素肌に着ている黒皮のライダースーツの隆起した胸の部分を、ゆっくりとなぞる。
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2016/03/07(月) 08:17 ショートショート PERMALINK COM(0)
今日は彼が仕事帰りに私の部屋に来てくれる。
初めて彼に作る手料理。
腕によりをかけて作らなくっちゃ。
買い物した帰り、ふと立ち寄った雑貨屋さんで大きなフリルのついた、ピンクのエプロンを見つけて衝動買いした。
お料理してる姿もかわいいと思ってもらいたくて。
早速エプロンを着て、お料理の支度を始める。
初めて見せるこんな姿。
ちょっと恥ずかしいかも。
彼が来た。
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2016/03/05(土) 08:52 ショートショート PERMALINK COM(0)
目を開けた。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、フローリングの床にひとすじの線を浮かび上がらせている。
一人暮らしのワンルームの部屋。
いつもと変わらぬ私の小さな部屋。
6月の日曜の朝。
脱いだままの状態で床の上に散らかった私の服。
二人がけのソファには、広げたままの雑誌。
そこは“ウェディングドレス特集”のページ。
そして、あなたの脱いだワイシャツ、ネクタイ。
私の下着。
あなたの下着。
いつもの私の部屋だけど、いつもとは違う日曜の朝。
背中にあなたの体温を感じる。
小さなベッドの中は、あなたの匂いに包まれている。
昨日の夜は、あなたは何度も私の中に放ったから。
たぶんシーツはシミになってる。
でも嫌じゃない。
あなたと私が一晩中愛し合った証だもの。
そっと、あなたの方に寝返りをうつ。
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2016/03/04(金) 12:02 短編小説 PERMALINK COM(0)
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