「あら、やっとお目覚め?」
おぼろげな意識の中で、北条美樹はその声の主を見た。
長い金髪の女だ。
鼻が高く日本人離れしている。
色白の顔に、真っ赤な口紅が映えた。
白いブラウスの胸が、はち切れそうだった。
歳は三十代半ばだろうか。
赤いマニキュアを施した長い爪が、美樹が素肌に着ている黒皮のライダースーツの隆起した胸の部分を、ゆっくりとなぞる。
美樹は体を動かそうとした。
「ううっ」
首筋に痛みが走る。
スタンガンを押し付けられた記憶がよみがえった。
頭を持ち上げる。
自分の置かれた状況が見えた。
高さのあるテーブル状の上に仰向けになっていた。
両手両足首がロープで縛られている。
そのロープの先はテーブルの下へと続いていた。
美樹は、傍らの女の顔をにらみつけた。
「お前が、西嶋クリステルか?」
「いい体してるのね?」
女は質問に答えず、薄ら笑いを浮かべ、こちらを見下ろしている。
指は美樹のへその辺りを撫で回しながら。
美樹は無表情で言った。
「無駄だ……私は、何もしゃべらない……」
天井を真っすぐ見上げた。
高さは5メートルはある。
打ちっぱなしのコンクリートに、むき出しの配線が何本も見えた。
そこを赤い西日が照らしている。
今は日が長い、六時頃か。
建設中の倉庫だ。
朝からここをずっと監視していたのだ。
部下の田代と一緒に……。
「あら、別にしゃべらなくてもいいのよ……この男が話してくれるから」
女の隣りに、男が現れた。
「特別麻薬捜査官の凄腕のエース、北条美樹も、無様な格好だな、ははっ」
「田代! お前!」
美樹は声を荒げた。
現れたのは、さっきまで一緒にここを監視する任務に就いていた田代だった。
そのとき、女の手が美樹の首元のファスナーに触れた。
「だから、あなたは何もしゃべらなくていいの……これはあくまで私の趣味なの……」
女の口元が吊り上がる。
美樹のファスナーが引き下ろされる。
隆起した胸に押され、指先のあとに続いて胸元が開いていく。
下に何も身に着けてはいない。
素肌が露出した。
ファスナーが股間の端まで全部下ろされた。
黒い面積の狭い下着が覗く。
女はいつの間にか手にナイフを持っていた。
刃を上向きにし、下着の上の端に滑り込ませる。
いとも簡単に生地が二つに割れる。
黒く縮れた毛並みが露出した。
女がつぶやく。
「北条美樹、30歳、身長180センチ、体重75キロ、0型、かに座、趣味、ロッククライミング……恋人……なし……。残念だわ……恋人がいたら、ここに連れてきて、このあなたの姿を見せてあげられたのに……」
女は美樹の股間から現れた太くなりだしたペニスに手を伸ばした。
「ふふっ、これは、楽しめそうだわ……」
女が舌舐めずりをした。
完
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