「おい、これ、お前にだ……」
校庭の隅だった。
昔の学級委員長から俺に一枚の封筒が渡された。
今掘り出されたばかりのタイムカプセルの手紙だ。
その封筒には『春香』の名前と『未来の最愛の人へ』と書いてあった。
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拝啓、この手紙読んでるあなたは、どこで何をしているだろう～♪
なーんて。
多分、私、この世にいないんだろうなぁ。
この手紙誰が読むんだろう。
私、お医者さんから、ハタチまで生きられないだろうって言われましたっ、よろしくっ！
なんかぁ、現代の医学では治らない病気なんだって。
おーい、誰かー、頭のいい人、私がハタチになる前まですごい薬を発明してくれいっ！
女に生まれたからには子供産みたかったな。
赤ちゃん抱いて、よし、よし、って一度言ってみたかった。
おっぱいあげるってどんな感じ？
チューチュー吸われるの？
キャー、なんかエッチっぽいー。
でも、優しい旦那さんと、子供たちに囲まれて、なんか普通でいいから、そんな風に暮らしたかったなぁ。
よし、この手紙どうせ私読まないんだから、思い切って色んなこと書いちゃおう。
私ここで告白します。
私……実は、直人君が好きです。
（キャー、大胆発言）
私校舎のカゲからずっとサッカーをしている直人君を見ていました。
（でもストーカーではありません）
今私の斜め前に座っているけど……。
直人君、誰にもわけへだてなく接して、このひそかにクラスでボッチの私にも普通に挨拶してくれて、ひそかにすごくうれしかったよ。
直人君がよそ見して私にぶつかったとき、転ぶ寸前に抱きかかえてくれて「大丈夫か？」なんて、キャー、あの時の直人君の腕の力強さ忘れられない。
ああ、高校卒業したらもう会えないのか？
思い切ってコクろうか？
強引に積極的に追っかけて、結婚までしちゃおうか？
ああ、でも私死んじゃうんだよね。
残された直人君、可哀想だよね？
でも、一度の人生だよね。
ああ、悩む……。
でも決めた。
今決めた。
残された人生悔いのないように生きる。
生きれるだけ頑張って生きる。
みんな、許してくれるよね。
じゃ、私ががんばった証に、未来の最愛の人に言います。
私、頑張ったよ。
ごめんね。
そして、ありがとう。
春香
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俺は娘の夏美に手紙を見せた。
「ほら、これ、ママが高校生のとき書いた手紙だよ」
「なんて書いてあるの？」
幼稚園に入ったばかりの夏美はまだ字が読めない。
「あとで、読んであげるね」
「うん」
「おーい、直人行くぞ」
昔の学級委員が俺を呼んでいた。
完
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