Ｒ３０ans[Ｒトランタン]Blog
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こんな関係が二年も続いていた。
もうそろそろ終わりにしようと思っていた。
先週は、田舎の両親の勧めで、お見合いをした。
裕二にもそれは告げてある。
それを理由に彼の誘いを断ったのだ。
私ももう、三十歳になろうとしているのだから……。
「ねえ、奥さんと別れて……」
機会があれば、申し訳程度にだが、裕二に訴えてはいる。
「もう妻とは冷めている……」
「近々離婚する……本当だ……約束だ……」
「もう少し、待ってくれ、俺が信じられないのか……？」
裕二の返事は、四十代も半ばに差し掛かった“大人の約束”だった。
仕事で付き合いができた相手に気を遣って言う『近いうちにメシでも……』
その類の約束でしかない。
“近メシ”の機会は永遠に来ないものだ。
自分からもっと積極的に働きかけなければ……。
そう思うときもあったが、月に一二度の裕二との逢瀬は、水を欲しがる乾いた植物の根のように、拒絶することはできなかった。
そして、自分の体を本能のまま突き上げる裕二を抱きしめては、思うのだった。
ああ、でも、この人はこんなにも私を求めてくれる……。
この人だけが、私という存在を必要としてくれる……。
ショーツを脱がされた。
「あ、だめっ！」
乱暴に求められたが、晴香の下半身はもう潤み始めてきていた。
裕二は一度彼女から離れると、もどかしそうに自分のベルトを外し、スラックスを脱ぐ。
パンツも一気に下げ、ベッドの脇に放り投げた。
ワイシャツは着たままだ。
ワイシャツの裾をたくし上げ、晴香の太ももの間に腰を入れ込んできた。
「あんっ！」
若干の痛みとともに、裕二の熱く硬いものが押し入ってきた。
すぐさま、スピードをもって腰が動き出した。
「あっ！　どうしたの？　あぁっ！」
ピストンのテンポを上げながら、先端が奥へと徐々に入り込んできた。
裕二がやっと口を開いた。
「結婚するのか？」
腰の動きとは裏腹に、口調は落ち着いていた。
晴香は答えず、目を開いたまま横を向く。
抵抗だった。
煮え切らない裕二への、せめてもの腹いせのつもりだった。
「そうなのか？」
まだ答えなかった。
「約束してくれ……結婚しないと……」
それにも黙っていた。
裕二が両肩を掴んだ。
ベッドに押し付けられた。
腰を打ち付ける力が強まった。
「晴香は俺だけのものだ……」
スピードが一段と速まった。
「あんっ、でも……あっ……」
あえぎをこらえながら裕二を見つめた。
「あっ！　でも……あなたは……あうっ！……私だけのものじゃないわ……」
今まで言ったことのない、強い表現だった。
「そうか……わかった……」
裕二の瞳が閉じた。
肩を押さえている手に更に力がこもった。
「いくよ……」
激しい動きの中、裕二が呟いた。
「出すよ……中に……」
「え！」
今まで、中に出されたことはなかった。
「出して」と、お願いしたことはあった。
しかし、裕二はそれに応じたことは一度もなかった。
なぜ、今日は、急に……。
「あっ、やめっ、今日は、だめなの！」
「この前、欲しいって言ってただろう？」
「どうしたの……？」
「今日は出したいんだ……晴香の中に……」
「それだけ？」
裕二の動きが止まった。
「そうだ……」
身勝手だ。
余りにも身勝手だと思った。
多分、お見合いしたことへの怒りだろう。
晴香は決心した。
「わかった……いいわ、中に出してもいいわ……でもその代わり奥さんと別れて……」
「ああ、わかった……」
躊躇なく答えた。
「え？　本当？」
「本当だ。だから今日は中に出させてくれないか……」
「離婚届……持って来て……約束して」
恐る恐るお願いした。
「ああ……そうする……約束する」
またすかさず返答された。
信じていいのだろうか？
でも……。
また“大人の約束”のつもりかもしれない。
でも……。
もう、やめよう。
うやむやにするのは。
今の言葉の責任は取らせよう。
そう心に決めた。
今日は“安全”と思われる日ではなかった。
もう言い逃れは許さない。
段々決意が強くなる。
家に乗り込んででも責任を取らせる。
「わかったわ……」
目を閉じた。
「出して……」
裕二は無言でまた動き出した。
晴香は裕二の動きに集中した。
中で動くものにも……。
裕二はいつもコンドームを付けた。
最初は何も付けないで動き、射精間近にだけ付けるのが常だった。
何も付けないで、こんなにも早く動くことはなかった。
裕二の“直”の早い感触だった。
コンドームの硬質な滑り方とは違う。
ペニスの表皮の滑りが心地よかった。
ともするとコンドームは痛みを感じやすい。
ストレートに粘膜を擦るからだ。
でもペニスの厚い表皮はずるずると前後運動し、肉の棒の動きをダイレクトには伝えない。
ワン・クッションおいて硬い棒の動きについてくる。
感覚でわかった。
硬くて、滑らかだった。
与えられる快感に、集中できそうだった。
やはりこれが自然な営みなのね……。
このまま出されるのはどんな感じなのだろう？
ああ、私はあなたを受け入れるわ……。
私はもう逃げない。
あなたを責めることから逃げない。
あなたの全部を身体で受け止める。
だから私にはあなたを責める権利があるの……。
「晴香、いくよ……」
そのときがきた。
「うん……いいわ……」
スピードは鈍らない。
裕二が目をつむる。
眉間にしわが寄り始める。
「ああ……いくっ……！」
動きが止る。
「はうっっ！……ううっ……」
次の瞬間、中のものが、ぐっと、大きくなった。
ああっ、くる！
息を呑む。
どくっ……どくっ、どくっ、どくっ。
続けざまに脈打ち始めた。
きた……。
直に……。
確かに……。
微かに温かいものが膣内を満たしている感じがする。
「はあ……はあ……はあ……」
裕二が荒い息のまま体を預けてきた。
その直後、肛門に温かいものがつたい流れるのを感じた。
中で放たれたものが溢れ出てきたのだ。
初めての感触だった。
晴香は顔を両手で覆った。
人生の転機は突然訪れる。
そう思った。
なぜか涙が溢れてきた。
なぜ泣いているのか自分でもわからなかった。
見られたくなかった。
なぜ泣いているのか訊かれたくなかった。
晴香は顔を両手で覆った。
裕二が髪を撫でる。
撫でながら耳元でささやいた。
「晴香に渡したいものがあるんだ……」
晴香は顔を上げる。
裕二がワイシャツのポケットから折りたたまれた薄い紙を取り出した。
それを広げて見せた。
印鑑が二カ所に押されてるのが見える。
「離婚届だ」
「え？」
晴香は目を見開いた。
「昨日、妻から判をもらった」
「え、本当？」
「本当だ」
裕二が微笑んだ。
晴香の顔がくしゃくしゃになった。
「本当なのね……」
「ああ、約束は守るよ……」
「うれしい！」
晴香は下から裕二に抱きついた。
「もう一回して！　お願い！　中にもう一回っ！」
裕二は苦笑した。
「はは、今、その約束は出来ないな」
晴香は、裕二を抱きしめながら転がると、今度は上になった。

完