「あ、また、動いた……」
拓也が、結衣のひざ枕の上でつぶやく。
耳と手は、結衣の大きなお腹に押し当てられていた。
彼らの寝室のベッドの上だった。
二人とも裸だった。
つい先ほどまで、二人で風呂に入っていたのだ。
「ほら、またっ」
拓也が結衣を見上げて微笑む。
「すごいなあ、ここに赤ちゃんが入っているなんて……」
結衣は、まだ少し濡れている拓也の頭を撫でた。
幸せなひとときだと思った。
今日は、拓也の会社の飲み会があった。
結衣は10時過ぎに拓也を車で迎えに行った。
同僚の女もひとり一緒いた。
途中、女を家に届け、家に帰ってくる頃には11時を過ぎていた。
家に入ると、すぐさま二人でバスルームへ行き、お互いの身体を洗い合い、二人でバスタブに浸かった。
今、バスルームからでたばかりの姿で寝室に来たのだ。
結衣は、帰ってくるときの車の中や、バスルームで拓也に訊きたい気持ちを抑えていたのを、今開放した。
「気持ち良かった?」
拓也が、おやっと、少し驚いた顔をしてから答えた。
「うん……」
やさしい顔で微笑んだ。
帰りの車の中で、助手席の拓也からは、後ろの女と同じ匂いが漂っていた。
バスルームで拓也の前にひざまずいて、ペニスを洗おうとしたとき、ぬめりがあった。
つまり、あの女とセックスしたと言うことだ。
それも迎えに行く直前まで。
「彼女どうだった?」
拓也の頭を撫でながら訊く。
「うん、すごい良かった……」
悪びれる様子もなく、拓也が答える。
胸が締め付けられるような感じとともに、言い知れぬ高揚感が湧き上がってきた。
「彼女の名前、なんて言うんだっけ?」
「芳恵」
「芳恵、さん……?」
確かめるように名前をつぶやく。
「何歳?」
「ん……確か36かな?」
拓也の4つ下、結衣より4つ上だ。
「彼女、胸、大きいんじゃない……?」
「うん、大きいね……」
また、胸が潰されるようだ。
結衣の身体は線が細く、胸の膨らみもあまりない。
自分の持たないものを持っている……。
「車の後ろの座席に二人で乗って、俺がいきなり抱きついて、キスしたんだ」
拓也が話し始めた。
「まあ……芳恵さん、抵抗した?」
拓也はにやっと笑った。
「全然……キスして、舌入れたけど逆に舌を絡めてきたよ」
「彼女、始めから拓也君としたかったんでしょ……?」
「多分……だって旦那と“してない”って言ってたから」
「そう、もうセックスレスなんだ……それから?」
「上の服捲り上げて、ブラを外して、胸を揉みながら、乳首をわざと、ちゅうちゅう音を立てて吸ったら、もう身体びくびくさせて感じてた」
拓也が女の服とブラを乱暴に捲り上げ、豊満な乳房にむしゃぶりついてる姿を想像した。
今、彼女の視点は、女の胸に顔を埋めている拓也を、斜め上から覗き込んでいる。
大きな胸の肉に指をめり込ませ、乱暴に揉みながら、もう片方の胸の中心に、尖らせた唇を埋め込み、乳首を音を立てて吸っている。
拓也の愛撫に女は仰け反り、身体を震わせている。
今、穏やかに、自分のひざ枕でくつろいでいる拓也が、さっきまでそうしていたのだ……。
今の拓也の穏やかかな表情とのギャップも結衣を高揚させた。
結衣の下半身が反応し始めた。
「それから、スカートの中に手を入れて、あそこを触ろうとしたんだけど、脚を閉じてて触れなかった」
「わかるわ、もう濡れてたから、それを知られたくなかったんでしょう……?」
「そう……ストッキングとパンティーを強引に引き下げて、あそこ触ったら、もう、びちょびちょだったよ」
拓也が微笑んだ。
「忘年会のときもそうだったから……」
拓也から忘年会のときの様子も聞いていた。
旅館の暗闇で、女を後ろから激しく突いたと、聞かされたときは、胸をかきむしられるくらいの激情が湧き上がった。
でもそれは同じくらいの興奮をも呼んだ。
今もそうだ。
結衣がひざを崩した。
ひざとひざの間に隙間が出来た。
拓也の頭がそこに落ちる。
結衣の手が、自分の大きなお腹を避け、股の間に差し込まれた。
指が自分の割れ目の縁を探り当てた。
拓也がその指の行方を見ている。
「彼女、濡れるのがすごい早いんだ。あそこから溢れるくらいだったよ。指でなぞったら、ぴちゃぴちゃすごい音してた。彼女必死で首を横に振ってたけど……」
指がその言葉通り、自分の割れ目の中心線を何度も上下する。
「こんなんじゃないよ、もっと、濡れてた……」
拓也が覗き込む。
「指を入れたんだ……彼女の中すごい動くんだよ……ぴくぴく動くの……結衣は動かせる?」
首を振った。
「あれ、すごい気持ちいいんだ……彼女をもっといじめたかったけど、もう我慢できなかった」
拓也の股間に手を伸ばした。
「忘年会のとき思い出しちゃって、もう挿れたくて挿れたくて、しょうがなかったんだ……もう俺の痛いくらい硬くなってた」
ペニスを掴んだ。
さっきまでは、ほかの女に挿れたくて、血管が浮き出るくらい硬く反り返っていたと思われるペニスは、今は指でつまんでも垂れるほど柔らかくなっていた。
「もう無理だよ。すごいいっぱい出したから……」
拓也がうっとりした顔を見せた。
役目を終えたペニスは縮こまり、陰嚢もだらんとして、ふたつ一緒に結衣の手の中に収まるくらいに小さくなっていた。
それをやんわりと揉んだ。
もう、私の愛撫には反応しないくらい“満足”したんだ……。
胸が締め付けられた。
「もう我慢できなくて、彼女の脚広げて、挿れちゃった……」
妊娠がわかってから、拓也とは一度もしていなかった。
「彼女の中、すごい締まるんだよ……」
拓也は子供のように目を輝かせて言う。
「私より……?」
「うん……すごいよ……あんなの初めてだ……」
ああ、私より他の女がいいなんて……。
胸がぎゅうっと、握り潰される。
喉も詰まって息苦しい。
でも下半身はどんどん熱くなってくる。
結衣は、中からあふれ出た液を指先ですくうと、クリトリスに塗った。
たっぷり塗り終わると、ゆっくり擦り始めた。
その突起はまだ柔らかだった。
「それにね、中ね……すごいでこぼこしてるんだ。出し入れするたびに引っかかって、すごい気持ちいいんだ」
拓也は「すごい」を連発する。
視線を上げ、そのときのことを思い出しているようだった。
結衣は目をつむった。
拓也のペニスが、女の割れ目から出たり入ったりしているのをイメージした。
そして、視点は拓也の後ろに移った。
拓也が脚を広げた女の間に、何度となく腰を打ち付けている姿が見えた。
ああっ!
指の動きが早くなった。
「この間は“後ろ”からだったけど、彼女は前の方が、いいなぁ」
クリトリスを絶え間なく擦り続ける。
突起が硬くなってくるのがわかった。
指を円運動に切り替えた。
あっ、あっ。
突起がこり、こりと、擦られ、倒れる。
「俺、彼女の耳元で、正直に彼女の中、褒めたんだ」
あっ、あっ。
身体がびくびくと、動き出した。
「ああ、いい、いいよ……“前から”も、すごくいい……って」
拓也は報告するように話す。
結衣は後ろに手を付き、身体を支えた。
「ああ……いい……いいよ……“前の方”がいい……って」
拓也が女の耳元で話している言葉だ。
「ああ、いい、いいよ……ああ、これなら毎日でもしたい……」
結衣は今は、二人の行為を横から覗き込んでいる。
拓也の腰がゆっくりと女の股の間で動いているのが見える。
「これなら毎日でも出来るよ……」
あっ……私とはそんなに、したことことないのに……。
もう、私とは全然してないのに……。
結衣には見えていた。
拓也は腰を押し付けると同時に、くっと上に突き上げる。
彼のいつものやり方だ。
突き上げるたびに、女の顔がゆがみ、微かに声を上げる。
拓也も目をつむり、吐息が漏れる。
「いい……いいよ……欲しい……これが欲しい……」
拓也が、うわ言のようにつぶやいている。
あんっ……私のは?
私のは、欲しくないの……?
女が拓也に抱きついた。
拓也がキスをした。
舌を絡め合っている。
「俺のもいい?」
拓也がそう言いって女を覗き込む。
「うん……」
女がうなずく。
そんなっ……そんなにいいの?
「旦那よりいい?」
「うん」
拓也のは、そんなにいいの?
私のものなのに……。
「だめだ…やっぱり、もうイキそうだ。ごめん、イっていい?」
もう?
そんなに彼女の中は気持ちいいの?
「うん……でも私のいいって、もっと言って……」
女が言った。
えっ!
なんで?
なんでそんなこと言うの?
「すごくいい……こんな気持ちのいいの、初めてだ」
ああ、拓也……そんなこと……?
「多分、挿れた男はみんな持たないと思うよ……」
他の男も……?
「独り占めするのもったいないくらいだ……」
拓也は、私にはそんなこと言ってくれたことはなかった。
「ああっ、もうだめだ……」
結衣の目線は、その女の後ろからのものになった。
拓也の腰の動きが早くなってる。
目を固くつむってる。
顔がだんだんゆがんでくる。
イクの? 拓也!
この女でイクの?
ああ、だめっ!
「ああっっ……イクっ!」
ああ、だめっ!
拓也は女から抜いた。
ペニスが現れた。
あっ、だめ! イっちゃ、だめっ!
拓也はペニスを握り、先を女の腹に当てる。
だめ! 出しちゃだめ!
先から、どく、どくっ、どくっ、と白い粘液が吐き出される。
ああ! そんなっ!
ぴたっ、ぴたっ、ぴたっと大量に腹の上に落ちる。
拓也を見た。
「はうっ……はっ……はっ……」
拓也はうめき声を上げ、快感に顔をゆがめている。
ああっ、イッた……。
拓也はこの女でイッた……。
その恍惚の顔がアップになる。
ああっ……拓也っ……。
結衣の身体は仰け反り、動きが止まった。
びくっ、びくっと、身体が痙攣する。
痙攣が止まると、ゆっくりと拓也の胸に崩れ落ちた。
拓也を見た。
寝息を立てていた。
拓也の頭を撫でた。
いつか……撫でてみたいと思った。
ほかの女にペニスを挿れ、腰を動かし、恍惚として顔をゆがませている拓也の頭を。
「拓也、気持ちいい?」
「うん、結衣、この女、すごくいいよ……」
完
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